冷やし中華は終わりますか?

No.4 - 2009/07/02


 2009年も半分が過ぎた。いつのまにか服装は半袖となり、歩くだけで汗ばむ気候となっている。そろそろ水道からなまぬるい水が出てくる時期だ。
 そんな夏の食べ物といえば冷たい食べ物である。夏こそ熱い食べ物だ、とか言ってキムチ鍋を食べだす人もいるかもしれないが、それでもまだ「夏といえば冷たい食べ物」のほうが多数派であろう。で、そんな冷たい食べ物の代表格といえば冷やし中華である。そして、冷やし中華といえば「冷やし中華始めました」という貼り紙である。しかし「冷やし中華終わりました」という貼り紙はどうも見ない。毎年、いつのまにか、ひっそりと冷やし中華は終わりゆくのである。夏の終わりはいつだって寂しいものだ、ということを体現している。
 冷やし中華が終わる、というのはわざわざ貼り紙にして貼り出すべきものではない、というのはわかる。本の発売は大きく宣伝されても、絶版は宣伝されないだろう。しかし、逆転の発想的に、「冷やし中華終わりました」と大々的に貼り出してみてもいいんじゃないだろうか。逆にそのほうが目立つし。「終わった」というのがマイナスイメージなら、「冷やし中華終わりました」の横に「焼きサンマ始めました」とでも貼り出せばよい。そうすればマイナスイメージも相殺されるだろう。晩夏の寂しさも消えるだろう――まあ、晩夏の寂しさは、それはそれでいいんだけどね。
 しかし、本当に終わっているのだろうか。実は、終わっていなかったりするのではないだろうか。実は通年メニューだった、なんてことはないのだろうか。それはそれで騙された気分である。しょせん客寄せのための貼り紙なのだろうか。温うどんが年がら年中売っていることを考えれば、べつに不思議な話ではない。ああ、そう考えれば情緒もへったくれもない話である。


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